挑戦的な目標を掲げることは、はたして正しいことなのか
中小企業支援に役立つテーマでコラムを掲載します。今回は、「挑戦的な目標を掲げることは、はたして正しいことなのか?」がテーマです。

ストレッチ目標の功罪
「簡単な目標より、現状より大きく背伸びをしないと達成できない高い目標(ストレッチ目標)を掲げた方が、企業も人材も成長できる」という考え方はマネジメントの常識になっています。しかし、大胆な目標設定は一歩間違えると問題を引き起こします。
数年前の大手電機メーカーの不正会計問題はその代表例で、実現困難な目標を現場に強いたことが粉飾会計につながったとされています。ストレッチ目標を実現するには従来と異なる方法が求められ、それが社員の挑戦意欲を引き出し、新たなブレークスルーを生むことがあります。しかし、多くの企業ではストレッチ目標が失敗し、業績がさらに悪化することも少なくありません。
ストレッチ目標設定の条件
ストレッチ目標が悪いわけではなく、効果的に機能させるには2つの条件があります。 1つめは企業の最近の業績です。業績が好調で長年の目標を達成した直後であれば、成功体験に支えられて社員は自信を持ち、難しい目標に対しても前向きに挑戦できます。逆に業績が低迷している企業では、社員は自信を失い、創意工夫よりも安易な手段を選びやすく、例えば実績データの改ざんなど自滅行為に陥る恐れがあります。
2つめは組織が使える資源の有無です。ストレッチ目標を追うには、現状のやり方を否定し、様々なアイデアを試行錯誤する必要があり、成功の確率は高くありません。だからこそ、失敗を許容できる余裕が不可欠です。余裕があれば失敗後も再起できる気持ちが持てますが、余裕がなければ安全策に走り、安易な解決策を選択して目標達成は困難になります。
業績悪化や資源不足の企業はどうすべきか?
業績が悪い、あるいは余剰資源が乏しい企業はストレッチ目標には不向きです。そうした企業は無理に高い目標を追うのではなく、「小さな現実的成功を積み重ねる」ことが基本となります。小さな成功が組織内に勢いや活力をもたらし、経営資源の蓄積や学習を促進します。これによりやがて大胆なストレッチ目標に挑戦できる土壌ができるのです。
加えて可能であれば、金融機関からの債務減免や新たな融資、第三者割当増資などで資金的余裕を意識的に積み増すことも有効です。1990年代の経営不振に陥った日産自動車や日本航空がその例として挙げられます。最も警戒すべきは、業績が悪く余剰資源もない企業ほど無謀な大胆な挑戦をしがちだという点です。
最も警戒すべきは、業績が悪く余剰資源もない企業ほど無謀な大胆な挑戦をしがちだという点です。ダニエル・カーネマン教授らの研究によれば、連続的な失敗経験を持つ意思決定者は大胆な方策を選択しやすいと指摘されています。
おわりに
業績が悪くて資源不足の企業が無謀にストレッチ目標を掲げるのは、まさにやけっぱちで愚かな行動であり、かえって企業の死期を早めることになります。まずは現状を正確に把握し、現実的で着実な対策を講じることが肝心です。
【参考】DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2017年9月号「ストレッチ目標で成功する企業 失敗する企業」
三枝 元
※当コラムの内容は執筆者個人の見解でありTAC株式会社としての意見・方針等を示すものではありません。
※当コラムは一般社団法人 日本金融人材育成協会ホームページの「ごえんをつなぐコラム」で掲載された内容を編集して掲載しております。
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