緊急事態に対応するためにしておかなければいけないことは?
~経営理念で優先順位を明らかにする
中小企業支援に役立つテーマでコラムを掲載します。今回は、「緊急事態に対応するためにしておかなければいけないこと」がテーマです。

良い経営理念の条件
経営理念とは企業の存在意義や提供価値を明確に示したものです。良い経営理念の条件は、企業のステークホルダー(利害関係者)の行動変化を促せることにあります。
社員が経営理念に深く納得すれば、「これは望ましい行動だから実践しよう」「これはふさわしくないからやめよう」と自発的に行動を改めます。その結果、企業の長期的な成果につながるのです。
ステークホルダーには従業員、株主、顧客、仕入先、そして社会全体が含まれますが、すべてに満足を与えることは困難であり、「誰を優先するのか」をはっきりさせる必要があります。
ジョンソン・エンド・ジョンソンのクレド
有名なジョンソン・エンド・ジョンソンのクレド(我が信条)を例に挙げます(同社ホームページより抜粋)。
<我が信条>
第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護婦、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。顧客一人ひとりのニーズに応えるにあたり・・・
第二の責任は、世界中で共に働く全社員に対するものである。社員一人ひとりが個人として尊重され・・・
第三の責任は、我々が生活し、働いている地域社会、更には全世界の共同社会に対するものである・・・
第四の責任は会社の株主に対するものである。事業は健全な利益を生まなければならない・・・
同社のクレドは、顧客・社員・社会・株主という4つのステークホルダー別に段落を分け、それぞれへの責任と役割を明示しています。さらに「顧客⇒社員⇒社会⇒株主」という順で優先順位を明確にしている点が特徴です。クレドはトップから社員まで広く浸透していると言われています。
1982年には、同社主力商品で当時全米トップシェアの解熱鎮痛薬タイレノールに青酸カリが混入され、7人が死亡する事件が起きました。パニックに陥る消費者の中で、同社は即座に生産中止を決定し、巨額の費用を惜しまず全品を回収しました。トップの判断を待たず、営業担当者が自ら担当薬局に走り回り販売中止を働きかけた例もあったそうです。
優先順位をつければ混乱しない
新型コロナウイルスの緊急事態宣言時、多くの企業が臨時休業を余儀なくされましたが、休業判断の早さには差がありました。この差は企業が「誰を優先するのか」という経営理念に基づく優先順位の違いによると考えられます。
休業が望ましいと理解しつつも、「現場の混乱」や「収益ゼロ」を恐れ判断をためらった企業も多く存在しました。経営理念で優先順位が明確になっていれば、迷いは減り、迅速な決断が可能だったはずです。
おわりに
不測の事態は、新型コロナのような社会的問題だけでなく日常的にも発生し得ます。あらかじめ「誰を最優先とするのか」を定めておくことで、速やかな経営判断が促され、現場での混乱を防ぐことができるのです。
三枝 元
※当コラムの内容は執筆者個人の見解でありTAC株式会社としての意見・方針等を示すものではありません。
※当コラムは一般社団法人 日本金融人材育成協会ホームページの「ごえんをつなぐコラム」で掲載された内容を編集して掲載しております。
経営について体系的に学びたい方へ

緊急時に経営判断を迅速にするには優先順位をあらかじめ決めておくことが大切ですね。
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