働き方改革はGDPを増やすのか?
~経済学的に考える
中小企業支援に役立つテーマでコラムを掲載します。今回は、「働き方改革はGDPを増やすのか?」がテーマです。

働き方改革でいわれている同一労働同一賃金、時短、テレワークなど、個々の話は恐らく誰も否定しないでしょう。しかし、働き方改革を実施してもGDPは増えるどころか減少する可能性もありえます。
GDPは需要サイドで決まる
GDP(国内総生産)は一国の経済規模を示し、その決定要因は総需要と総供給の二つの側面があります。総需要は国内消費、投資、政府支出、純輸出(輸出から輸入を差し引いたもの)から構成されます。
基本的に、需要が増えれば供給も増加し、需要が減れば供給は減少するため、GDPは需要サイドで決まると考えられます。総需要の中で比較的旺盛なのは民間の設備投資ですが、その大半は小売りや外食、サービス業における省力化投資に偏っています。これは人手不足の中で新たな雇用を抑え、省力化で対処しようという動きです。
需要が減っているのに生産能力を上げることの意味は?
また、働き方改革の一環で残業規制が強化され、残業代が減少する結果、日本全体の給与所得総額が減っています。残業代を生活費の一部として依存している人は多く、給与所得の減少は消費低迷につながり、残業代抑制が消費の冷え込みの一因との指摘もあります。
「生産性の向上で余った時間が余暇に回り消費が増える」という見方もありますが、所得が増えない中で時間だけ増えても消費拡大にはつながりにくいのが実情です。
景気が良くなれば生産性は自ずと上がる
生産性向上は当然必要ですが、そのアプローチには注意が必要です。国全体では需要を増やし景気を良くする政策が不可欠で、企業単位では売上や利益を伸ばすことが生産性の向上につながります。
経済学の「履歴効果」によれば、現在の経済状況が未来を決めるため、不景気の際は企業に投資余力がなく生産性は向上しにくい一方、好景気になれば注文が増えて効率化が必然となり、生産性は自然と上がります。
おわりに
生産性は「アウトプット÷インプット」で表されますが、多くの場合、省力化というインプット削減に注目されがちです。しかし本質的にはアウトプットを増やすこと、つまり生み出す価値や売上の拡大を重視すべきです。需給バランスを踏まえながら、需要拡大を目指す政策や企業の戦略強化で、持続的な生産性向上を目指すことが重要です。
三枝 元
※当コラムの内容は執筆者個人の見解でありTAC株式会社としての意見・方針等を示すものではありません。
※当コラムは一般社団法人 日本金融人材育成協会ホームページの「ごえんをつなぐコラム」で掲載された内容を編集して掲載しております。
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