マクロとミクロの視点の使い分ける
~経営学と経済学の間を往来する
中小企業支援に役立つテーマでコラムを掲載します。今回は、「経営学と経済学の使い分け」がテーマです。

経営学と経済学の目的の違い
多くの人は「経済学」と「経営学」を同じもの、あるいは経営学は経済学の一分野と捉えがちですが、実際には目的が異なります。経営学は経済学を基に発展しましたが、経営学は「単一企業の利益最大化」というミクロ視点を追求します。一方、経済学は「国全体の利益最大化」というマクロ視点をテーマにしています。
ここでよくある誤解は、「企業一つひとつが利益を最大化すれば、国全体の利益(GDP)も最大化する」という考え方です。この考えは間違いです。一企業が利益を最大化するためには競争から抜けて独占状態を目指すこともあります。経営学でもそう教えますが、市場を独占すると価格が不当に上昇し、消費者は損失を被ります。結果として、企業と消費者で構成される経済全体の利益は阻害されます。そのため、経済学では市場をできるだけ完全競争状態に近づけることを重視します。独占禁止法はその意図を反映した制度です。
さらに、国全体でイノベーションを数多く成功させることも重要な課題ですが、アプローチは異なります。経営学は個々のイノベーションの成功率を高めることに力点を置きます。対して経済学は、イノベーションは本質的に成功確率が低い(ハイリスク・ハイリターン)ため、質は問わず多くの挑戦を促す環境整備を重視します。つまり「数打ちゃ当たる」という考え方で、規制緩和や研究開発投資を促進する税制や資金市場の整備が具体策として挙げられます。
「木を見て森を見よ」の重要性
確かに企業個々の努力は大切ですが、企業単位でできることには限界があります。ミクロ偏重の考え方は経営者や経営学者、経営コンサルタントに多く見られ、ときには「日本経済が改善しないのは国民が頑張らないから」という精神論に陥ることもありますが、それは問題の本質を見誤っています。
重要なのは、経営学のミクロ視点も経済学のマクロ視点も両方大切だということです。私自身は経営コンサルタントとして企業の課題に向き合う際は経営学的思考を用いますが、経済全体の分析や政策論評にあたっては経済学の視点を使い分けています。
おわりに
経済学の視点がなければ、正確な現状把握はできません。皆さんもぜひ、「木も見て森も見る」ことを心掛けてください。実務的な意思決定では経営学的発想を、国の政策判断や選挙での政党・候補者選択には経済学的思考を取り入れることが大切です。
三枝 元
※当コラムの内容は執筆者個人の見解でありTAC株式会社としての意見・方針等を示すものではありません。
※当コラムは一般社団法人 日本金融人材育成協会ホームページの「ごえんをつなぐコラム」で掲載された内容を編集して掲載しております。
経営について体系的に学びたい方へ

マクロとミクロ視点の使い分けが分かったら、それを経営改善に繋げたいものです。
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